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「MOTHER」岡清華にインタビュー、アーユルヴェーダの伝統と叡智を現代に

<基本情報>
氏名:岡清華(Sayaka Oka)
活動拠点:東京
職業/活動:「MOTHER」創業、アーユルヴェーダ/ヨガ講師
Instagram:@okasayamother___jp
HP:https://www.mother-japan.com/

■More about 岡清華
現代の日本人に合ったアーユルヴェーダのメソッドを伝える「MOTHER」を、2019年よりスタート。2020年には独自の観点化から体験型のオンラインスクールも開校し、瞑想・ヨガや講義を含むオンラインクラスをはじめ、コミュニティ、ECショップの運営、食を通じたエシカル事業など多方面で活動しながら、アーユルヴェーダを通して“真の健康・美・豊かさを知るための本質的な学びと実践”を提供している。

もともとファッション誌モデルとして活躍しながら、大学卒業後に管理栄養士資格を取得。栄養学やアーユルヴェーダを通して出会ったヨガへの造詣も深い。初書籍:『無敵のデトックス大全 – 溜まっているオトナを巡らせる!』22年3月14日発売。

■子供の頃の夢を教えてください。

私、実は子供の頃全く夢がなくて、絞り出しても絞り出しても、全然出てこなかったんですよ。それは高校生・大学生になっても変わらずで、何か具体的な職業に憧れることもなく、“普通にOLして、良い人間であれたら良いな”って思ってたくらい。だから今仮に自分の夢が見つからなくて、悩んでいる人がいたとしたら、ぜひ私を参考にして安心して欲しいです(笑) 私自身、長い間ずっと模索していたので、夢が見つからずに悶々とする気持ちがすごくわかるんですよ。

ただ思い返してみると、昔から<自分の力で、周りの人を幸せにできる事をしたい>という、漠然とした想いは常にありましたね。それは私の日常の出来事から感じていたことで、例えば朝ごはんを家族のために作ってあげたら、皆が「美味しい!」って喜んでくれた時だとか。アパレル店員をしていた学生時代、私が提案したお洋服がきっかけで「人生が変わった!」と、心からのお礼の言葉を伝えてくれたお客様の笑顔だとか。それがどんなカタチであれ、自分の行動ひとつで“誰かの幸せな瞬間”を作れることに対して、心の中で深い喜びを感じていたんです。だから将来もこんな風に周りの人を笑顔にできる仕事に携われたなら、それは凄く理想的な生き方だなって考えていました。

Motherオリジナルのネティポット
※アーユルヴェーダに基づく健康法のひとつで、鼻洗浄に使用される。

現在の仕事/活動を始めたきっかけは?

そもそものきっかけは、15歳の頃に無理なダイエットを通して、身体もメンタルも崩れてしまった経験から、<身体×食の関係性>に興味を持ち、管理栄養士養成の大学に入学したことが始まりでした。当時は色んなダイエット法が世の中に蔓延っている時代だったので、自分の身体に合った食事法を選ぶためにもを、まずは自分で根本を学ぶことが一番だと考えていたからです。

とはいえ、大学に入学してからも、栄養学だけでは腑に落ちないことが、次々と出てきました。それは食がもたらす心への影響だったり、個人の体質×食の関係性だったり、一人一人が発症しやすい病気の違いだったり…。そういった疑問をもとにリサーチを続けた結果、ついにヒットしたのがアーユルヴェーダという存在でした。

これは私自身の身体・内面の大きな変化を通しても言えることですが、アーユルヴェーダの豊かな叡智は、個人の体質はもちろん、個性に合わせても、それぞれの人生をより生き生きと輝かせることができるものです。そして本当の意味で、自分にマッチするものを生活に取り入れ続けることで、健康的なライフスタイルだけでなく、“本物を見抜ける”識別の目や、ブレない自分軸というものも確立することができる。そして、そういった何か自分の中で信じられる<指針>のようなものがひとつあれば、日々の食材選びから、人生レベルの仕事選びまで、自然と自分にマッチしたものを選択できるようになれるでしょう。

学べば学ぶほど、この叡智を伝えることこそが、周りの人たちを<本質的なレベル>で幸せにできることだと確信した私は、こうして“初めての夢”へと動き出しました。もちろん最初の頃は模索続きで、それこそ栄養指導やヨガクラス、料理提供など、手当たり次第自分の持っている知恵やスキルを提供することからスタートしました。そして自分の心地の良いあり方も見つけながら、現在の「MOTHER」の活動へと繋げています。

■この仕事を通して、最も嬉しいと感じる瞬間は?

これは昔から変わらずで、誰かの幸せな瞬間を作れることが、やはり一番嬉しいんですよね。特にアーユルヴェーダは、人生レベルで変化をもたらすものなので、「人生の転機となった」というメッセージをいただけたり、「MOTHER」のオリジナルのプロダクトを取り入れた人から「身体も気分も調子が良い」と、感謝の言葉をいただけたりすると、仕事の疲れなんて一瞬で吹き飛んでしまうほど嬉しくなる。この活動をしていて本当に良かったって、心から思うのです。

同時にこうしたお客様からの言葉や笑顔は、私たち「MOTHER」の原動力でもあるため、日々フィードバックをいただける環境作りに注力していることも事実です。そのため交流会やコミュニティという場を積極的に設けていますし、そこで得たお客様との出会いや、学び合い成長しあえる仲間の皆様の笑顔や嬉しい言葉を、私たち自身にもしっかりと循環させています。こうした取り組みで自分自身のモチベーションを高めることで、もっと進化していきたいし、もっと沢山の人に幸せを届けたいって、何度も何度も奮い立たせられるんですよね。

Motherオリジナルのヤエヤマクロレラ×ターメリック粒
※解毒作用や排出を司る内臓を癒し活性化し、毒素も疲れも溜まりにくい身体に導く

■仕事/活動に関するインスピレーションは、普段どのように得ていますか?

日常のありとあらゆるシーンから。私は自分が物質的にも非物質的にもサービスを提供する立場であることから、その分日常生活では自分自身が<イチ消費者>としての目線で、自分が受け手となった時に、一体どんなモノ・サービスに感動するか、そしてどこにお金や時間やエネルギーを使いたいのかという感覚と視点を、凄く大切にしているんです。そしてさらに、そこで感じた良いものを、自分の仕事の中で循環させることも心掛けています。

例えばタクシーの運転手さんから感動的なサービスを受けた時、その姿勢を授業で活かしてみたり、新聞やWEBニュースで目にした“うまい”タイトルや見出しの付け方を、自分が発信しているSNSでも真似てみたり、愛犬の可愛らしい反応をみて、私もフレンドリーな要素をプラスしてみたり…挙げたらキリがないくらい本当に沢山!

それから自分が作りたい商品がある場合、まずは同じジャンルで自分が一番最高峰だと思うものに触れてみて、消費者目線で“私だったら、もっとこの要素が欲しいかな”なんて視点でものをみて、研究し、自社で実現させたりすることもありますね。私にとって、日常の全てがインスピレーションの連続であり、インプットの場であると考えているので、朝から夜までアンテナが常に全開なんですよ!毎日が本当に楽しいですね!

■現在の活動を通して、この世界にもたらしたいことは?

大人になると、子供の頃のピュアな気持ちを忘れかけてしまうように、時代が進むごとに失われてしまうものがあるって、感覚的に感じとることがあるんです。その一つが先人たちの伝統や叡智であり、それらをこの世界に残していくことを、私はある種の使命のように感じています。

<世界最古の医学>と呼ばれる、アーユルヴェーダが私にとっての大きな軸ですが、これも“おばあちゃんの知恵”のように、昔の人々が何世代も何世代も継承してきてくれたからこそ、現代に活かすことができる宝物。もちろん数千年続いてきた伝統を現代にそのまま活かすことはハードルが高いので、軸となる思想の部分はしっかり引き継ぎながら、現代に合うモダンにアレンジした部分も、この世界に残しながら発信していきたいです。

人生の中で、お金とはどんな価値を持ちますか。

<お金>というのは、手段のひとつでしかないと思っています。現在の貨幣制度がなかった大昔でも、“物々交換”という方法があったくらいだから、何かを受け取った時に対価として支払うツールは、どんな時代にも必ず存在する。現在共通の手段として存在するのが、<お金>というだけです。

ただお金というものは、使う人の特性というものが凄く現れるものだとも感じていて、お金があるだけ幸せになれるとも限らないですし、逆にお金が少なくても幸せな人も沢山いる。いわばお金というのは表面的な物質に過ぎないので、私たちはお金を使う際のマインドだったり、価値観だったり、結局は“使う人の心”が最も大切だと感じています。

もし仮にお金の価値がなくなった時、自分の中で残るもの/大切にしたいものは一体何か?その問いかけを続けることも、現代・次の時代を生きる上で必要なことかもしれません。

■サステナブルの定義を教えてください。

アーユルヴェーダの哲学とも共通しますが、小手先のことに囚われず、まずは<全体像>を捉えた上で、宇宙全体の調和が取れたバランスを持続させること。具体的には、仮に「100年間地球で暮らす」という設定があった際に、“1日が100年続く”と考えるのではなく、100年という有限な時間を捉えた上で、“1日1日をどう送るか”というマインドを持つ感覚に近いですね。

それはある種、私たちの寿命や地球にある資源が有限であることに、気付くということ。日々目先のことばかりに重きを置いて生きていると、今の生活がずっと続くような“永続的な感覚”ってあると思うのですが、実際にそんなことはひとつも存在しない。全ての物質的な万物には限りがあるため、少し目を背けたいところではありますが、<物質的なものは全て有限である>という視点に立って、この地球での過ごし方について考えることが大切だと思います。そうすれば先程の「100年間」という時間軸の例えでも、逆算して行動することができるし、少しでもより良い地球にするための努力をすることができるはず。もちろん大昔のような、地球の自然を戻すことは難しいけれど、先人たちの知恵を借りながら、人類と自然のバランスの取れた状態を見つけていきたいですね。

これからの地球に、もっと必要だと思うことは?

一番必要なのは、自然に対する敬意。現在の状況って、やはり人間が地球を支配しているという勘違い的な視点に至りやすいので、“地球に住まわせてもらっている”“自然と共に共存して生きている”という意識が、これからもっと大切だし、必要不可欠になってくると思います。

同時に、自分自身に対して理解を深めることは、イコール自然界を理解することにも繋がると思っていて、──哲学的な視点なのかもしれないですが、自分の命の意味だったり、この世に存在する目的だったり、そういった抜本的なことを見つめ直すことも、私たちが地球で暮らすヒントにも繋がると考えています。

そもそも私たち人間は、<目に見えないもの>を感じる力や霊性のようなものを、元々持ち合わせて生まれた生き物のはず。外側の物質社会だけにとらわれず、自分の内側を理解しようとする意識を、取り戻すことも必要なことだと思います。

<We want to know more about you…!>

■ご自身の一番好きなところを教えてください。

<不完全な自分>であるところが、私の一番好きなところかもしれません。少し昔までは、欠点だらけで不完全な自分が凄く嫌だったんですよ。恥ずかしい、みすぼらしい、隠したい…って思ってたくらい。けれど今振り返ってみると、足りないものが沢山あったからこそ、私は今の自分と出会えているんだなって、気づくことができたんです。

仮にもしも自分の容姿が完璧だったら、私は芸能界で食べていくことを選んだかもしれませんね。(笑)しかし到底自分には届かぬ世界だということを悟り、一度与えられたチャンスにあった当時の私は落胆しながらも別の手段を探しました。そして仮にもし私に欠けている要素がなかったら、──今に繋がる<夢>を叶えるために地元を飛び出したとき、こんなにも素晴らしい仲間たちが私のもとに集まり、サポートをしてくれることはなかったでしょう。

だから全てにおいて、パーフェクトな自分じゃなくて良かったって、今なら心から思うんです。逆に私がもし完璧な人間だったら、きっとこの人生は全然幸せなものではなかったはずだから。こうして俯瞰してみると、欠点だと思っていることこそが、自分の長所に繋がるのかもしれませんね。

■自分自身に対して、大切にしている習慣は?

自分が好きなことを、何でもさせてあげること。まるで私自身が自分の子育てをしているような感覚で、進む道が険しいものだと、仮に心のどこかでわかっていても「それ本当にやりたいの?それなら自由にやりなさい」って、GOサインをいつも出してあげるんです。

実は東京で暮らしていることもそのうちの一つで、やはりあらゆる業界が集まり、経済・人の流れが盛んなこの街は、時に私自身も<調和>を保つことが難しく感じることもあるんです。けれどだからこそ、このストレス社会で頑張っている方たちのライフスタイルや感情面についても深く理解できるし、その中でどうやってアーユルヴェーダを取り入れるのか?というメソッドを伝えることこそが、今の私にとっての試練であり、挑戦であり、やり遂げたいことでもあります。もちろんこれは決して簡単なことではないけれど、自分が納得するまでやり切りたいし、逆に“もう十分だ”って思ったら、辞めることも許してあげたいです。

この感覚はきっと、お腹が空いた時に食べる“食べ物”と同じなのかもしれないですね。自分が食べたいと思ったら、しっかり食べ切る。けれど満腹ラインを超えてしまったら、きっと気持ち悪くなって、これ以上食べることを自然と辞めるはず。私にとってのメンターような方から戴いた言葉でもありますが、「全部を経験した上で判断すること」というのは、私が大切にしているモットーでもあり、それを踏まえた上でこれからも自分のハートに従って、活動を続けたいと思っています。

そして時には、休息をとる時間も忘れずに。私は少し感覚が鈍ってきたなと感じることがあれば、すぐに大自然の中で身を置く時間も大切にしています。

■失敗から学んだ一番教訓は?

沢山あり過ぎる(笑)けれど全てを総称して言えることは、失敗しないと成長できないということ。もしこれからも自分の成長を望むのであれば、失敗や挫折とは一生付き合っていくべきものなのだということを、一番学びました。

私はよくこの例え話をするのですが、人間って今よりも高いところに行くため、ジャンプをするためには、一度身をかがめてしゃがむことが必要じゃないですか。直立のままジャンプしても、うまく飛び跳ねることってなかなかできない。だからもし失敗や挫折の最中にいる際には、“今私は思い切りジャンプするために、しゃがんでいる状態なんだ”って、考えるようにしているんです。そうすれば全然怖くない。むしろ、この先には一体どんな景色が待ち構えているんだろう?ってワクワクしてしまうくらいなんですよ。

仕事の中で具体的な例を挙げると、「MOTHER」の活動はこれまで対面をメインに行っていたのですが、コロナの流行がはじまった際、一度断念せざるを得ない状況へと陥ったことがありました。クラスもできない、商品もお店で売れない。まさに八方塞がりな状況下でしたが、それは結果として<オンライン>という新たなサービスを提供する大きな転機にも繋がったのです。

元々都内でのクラス開催に限られていたこともあって、もっと日本全国の方々にアーユルヴェーダを広めたいと考えていたことが、まさかこんなかたちで実現するとは思いもしなかった。一見絶望に見えるような状況の中だって、必ず光はあるんですよね。挫折・失敗さえも、きっと運命が決めることだとも思うので、私はこれから先また大きな挫折を経験しても、素直にありがたく受け取りたいです。きっとそこにはまた、人生がガラリと変化するような成長とギフトが待ち構えているはずだから。

■地球で過ごす時間が残り1年だったら?

今のままの生活を続けます。Appleのスティーブ・ジョブズの名言の中で、「もし今日が人生最後の一日だったら、今日やることは本当にしたいことなのか?」という有名な言葉がありますが、それはまさに私自身も、大学生の頃から毎日自分に問うてきたこと。毎日を有限な時間と捉えて、自分のベストを尽くしていれば、仮に今日が最後の一日だったとしても、もう自分がやり残したことなんてないって、きっと思えるから。だから残りの時間がどんな長さだろうと、私は今選んでいる生き方をずっと続けていきます。

■次世代の子供たちに伝えたいメッセージは?

これは過去の私自身に対しても言いたいことですが、あなたは才能を持っているし、完全な存在だから、どうか自分のことを信じて欲しい。誰に何を言われようが、自分の感覚を信じて、自分には他の人にない素晴らしい才能を持っていることを知っていてほしい。

もしかすると、自分は周りとは違う変な人間かもしれないと思うこともあるかもしれないけれど、その“違い”こそが、他の人が持つことができない、あなただけの素晴らしいギフトだから。そして自分のことが普通だと思っている人も、あなたにしかできない唯一無二のものが必ずあります。人は一人として同じ人は存在しないから。だからどんな時にも、間違った情報や大人たちの言葉にどうか惑わされないでほしい。信じるべきは、いつもあなた自身。そして本当にスペシャルな存在なんだよって、いうことを伝えたいですね。